2024年11月02日 06:00
もう涙はない猫
「もう涙はない猫」
ある街外れの小さな家に、長い間泣いてきた猫が住んでいました。
その猫は黒い毛並みと澄んだ青い瞳を持っていましたが、誰よりも多くの涙を流し、
その度に瞳は悲しみの色を増していきました。
毎晩、月明かりの下で小さな窓辺に座り、静かに泣く猫。
通り過ぎる人々はその姿に気づかず、猫が流す涙の理由を知る者はありませんでした。
「どうしてこんなに泣くのか?」と誰もが問わず、ただ猫はひとりきりで泣き続けました。
ある日、猫の前に小さな鳥が現れました。
鳥は不思議そうに尋ねます。
「どうしてそんなに泣いているの?」
猫はしばらく黙っていましたが、やがて静かに答えました。
「いつもそばにいてくれた大切な友達が、もうここにはいないんだ」
鳥は猫のそばにとまり、しばらく一緒に静かに夜を見つめていました。
そして、「涙が枯れても、心の中にその友達はずっといるよ」と、やさしく言葉をかけました。
それ以来、猫は涙を流すことをやめました。
瞳には確かにもう涙はなく、代わりに穏やかな光が宿るようになったのです。
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